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薬物離脱症候群について(ちょっと長いです✋😅)

薬物離脱症状
薬物離脱症状は大量,長期間にわたる薬物の使用を中止または減量することによって生じる薬物特異的な症候群の発現と定義される。臨床的に著しい苦痛,社会的,職業的または他の重要な領域における機能の障害を呈する。症状は一般身体疾患によるものではなく,他の精神疾患ではうまく説明されないなどの特徴がある。離脱症状をきたす精神作用物質としては,アヘン類(麻薬類),覚醒剤,コカイン,睡眠薬抗精神病薬,アルコールなどがある。離脱症状としては,不安,不穏,焦燥,不眠,注意障害,せん妄などがある。頭痛,嘔気,嘔吐,発汗などの身体症状がみられる場合もある。

 

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考1/2
→精神依存/身体依存/常用量依存/嗜癖/離脱症候(退薬症候)/耐性/薬物乱用

薬物依存には、ドラッグによるものだけではなく、医療に使われている薬物によるものもある。

[WHOによる依存形成薬物の分類]
タイプ 中枢作用 精神依存 身体依存 耐性 薬物
アルコール 抑制 ++ +++ ++ アルコール
アンフェタミン↓ 興奮 +++ ー ++(+) アンフェタミンメタンフェタミン、MDMA、塩酸メチルフェニデートリタリン®)
バルビツレート
ベンゾジアゼピン誘導体↓ 興奮 ++ +++ ++ バルビツレート誘導体
ベンゾジアゼピン誘導体
大麻↓ 抑制 ++(+) ー ー マリファナ(ハシシュ)
コカイン↓ 興奮 +++ ー ー コカイン←→歴史
幻覚発現薬↓ 興奮 +++ ー ++ LSD-25、メスカリン、サイロシビン、PCPケタミン
CART ? ++ ー? ー? CART覚醒剤に類似)
オピオイド↓ 抑制 +++ +++ +++ モルヒネ、ヘロイン、コデインペチジンフェンタニル
有機溶剤 抑制 + ー ? トルエン、シンナー、アセトン、エーテル*、クロロホルム*

日本の向精神薬は、その乱用の危険性および医療上の有用性の程度により第一種から第三種までの3種類に分類されている。
U.S. Drug Enforcement Administration(米国麻薬取締局)による薬物乱用の危険度表示は、“Schedule I”〜“Schedule III”

英国では1971年に薬物乱用法 the Misuse of Drugs Actに基づいて薬物規制が行われていて、その後何度か修正が加えられている。
薬物の危険度順 (ABC) に分類
クラスA:最も有害 most harmful
エクスタシー、>LSD、ヘロイン、コカイン、クラック、マジックマッシュルームなど
クラスB:中間 an intermediate category
アンフェタミン(注射用の場合はA)、メタンフェタミンコデインなど
クラスC:害が少ない less harmful
GHB、ケタミンなど

薬物依存 drug dependence:(WHOの定義)
 「薬物依存とは生体と薬物の相互作用の結果生じる、特定の精神的、時にまた身体的状態を合わせていう。特定の状態とはある薬物の精神効果を体験するため、また、時には退薬による苦痛から逃れるために、その薬物を継続的あるいは周期的に摂取したいという強迫的欲求を常に伴う行動やその他の反応によって特徴づけられる状態をいう。耐性はみられることも見られないこともある。1人のものがひとつ以上の薬物に依存することもある」
 薬物の作用による快楽を得るため、あるいは離脱による不快を避けるために、有害であることを知りながらその薬物を続けて使用せずにはいられない状態。
 薬物依存は、中枢神経が関与する。特定の行為を行ったとき内因性の快楽物質が生成されて強い快感を生じ、それが一種の条件づけ刺激になると考えられている。この作用に加えて、摂取される薬物そのものが一種の快楽物質の代わりに働いたり、薬理的な作用で内因性の快楽物質の生成に関与すると考えられる。薬物依存症では、条件づけによる常習化以外にも、神経細胞が組織的、機能的に変質して薬物なしでは正常な状態が保てなくなる場合があり、この現象も薬物依存の形成に大きく関与していると考えられている。

わが国では昭和20年代と昭和45年頃から現在にいたる覚醒剤乱用、昭和30年代のヘロイン乱用と、薬物乱用流行の山が3つあり、「麻薬及び向精神薬取締法」、「大麻取締法」、「あへん法」、「覚せい剤取締法」のいわゆる薬物4法によって厳しく対処されている。

精神依存 psychic dependence、mental dependencee
従来から習慣性と呼ばれる症状
強い欲求のため、その薬物の使用を意志でコントロールできない強迫状態。薬物を探すなどの行動がみられる。
身体依存 physical dependence
もはやその薬物が常に存在しなければ代謝が性状に行われなくなるため、薬物が切れると激しい肉体的障害すなわち禁断症状が起きたり、ときには死ぬこともあり、外部から強制的に行われなければ薬物を中止できなくなる状態で、周期性あるいは慢性の中毒症状
強力な身体依存をもたらす薬物は乱用される傾向があり、その依存の治療は困難である。
常用量依存(または臨床用量依存、低用量依存) usual-dose-dependence
 ←→ベンゾジアゼピン系の薬物依存
ベンゾジアゼピン系薬剤では、臨床用量の範囲内でも長期の服用で身体依存が形成され、退薬症状が出現することが知られている。
投薬開始時の症状はなくなったのに、減薬や服薬中止をすると、もともとの症状に加えて、それまでにはなかった症状までも出現する。
嗜癖 addiction
身体依存と同じような概念であるが、強迫的使用や薬物による圧倒的な侵襲を特徴とする生活スタイルを意味し、身体依存がないときにも生じうる。
当人が理解して認めていようがいまいが、嗜癖は薬物使用を止める必要性と害悪のリスクを含んでいる。
離脱症候、退薬症候 withdrawal syndrome(禁断症状 abstinence syndrome)
 ←→物質またはその離脱による頭痛
主に中枢神経系薬物を反復的に摂取し依存が形成されたときに、その薬物摂取を断つことにより現れる症状を離脱症候(禁断症状、退薬症候)という。
薬物の血中濃度の低下で出現する不快な身体症状(不眠、不安、振戦、発汗、痙攣発作、妄想、幻覚)
DSM-IV:それまで常用してきた精神作用物質の摂取を中止または減量した際に物質特異的な症候群がみられることを離脱 withdrawal といい、薬物常用中に生じるものと規定している。

ICD-10:さらに、離脱症状を軽減または消失させるためにその物質を摂取していることを離脱の要件としている。
アルコール中毒離脱症状では不眠、抑うつ、振戦、痙攣などがある。
オピオイドによる退薬症状では、あくび、瞳孔散大、流涙、鼻漏、食欲低下、嘔吐、腹痛、下痢などが生じることがある。
バルビツレートによる退薬症状では振戦、せん妄、痙攣などが生じる。
SSRIパロキセチン離脱症状を引き起こしやすい。
中枢神経薬以外では、副腎皮質ステロイドの長期使用時に急激な使用中止や減量で起こる全身倦怠感・吐き気・頭痛・血圧低下・関節痛などの症状をステロイド離脱症候群という。


耐性 tolerance
薬物を反復使用して用いているうちに、薬物代謝系が賦活されて用量の有効部分が次第に減少し、低用量で当初に達成された効果を得るための用量の増加を必要とする現象。
薬物が効きにくくなるたびに使用量が増えていくことが多いので、耐性の形成と薬物依存の強さは密接に関わっているが、概念が異なる用語である。
耐性は、ある特定の薬物に対する生体の感受性の程度を示す基準から、その程度が低いことを示す用語。

WHOによる国際疾病分類ICD-10では、依存症候群は、「ある物質の反復使用の後に起こってくる一群の行動的、認知的、生理的な現象で、典型的な場合には、その薬物を摂取したいという強い欲求、その薬物の使用を制御できないこと、有害な結果が起こるにもかかわらず薬物使用を継続すること、耐性の増大、時に身体的離脱症状が出現すること、などが起こる。」と定義されている。そしてその治療において社会復帰活動がきわめて重要であるとされている。
薬物乱用 drug abuse →薬物乱用頭痛
医療目的から逸脱した用法・用量で必要以上の大量の薬物を時々、または、絶えず使用する行為
酒などの嗜好品を健康、社会生活を破綻させるほど摂取すること。
使用規制がされている薬を違法に入手使用すること
 [作用機序] ←→オピオイドによる多幸感と精神依存の機序 参考1
薬物依存症は、学習の一形態と考えられる神経機能の変化と関連する。
多くの乱用薬物は、中脳辺縁系におけるドーパミン(DA)作動系を活性化させる細胞メカニズムによって3つのグループに分類できる。
オピオイドカンナビノイドベンゾジアゼピン、ガンマヒドロキシ酪酸(γ-hydroxybutyrate, GHB):GABAニューロン(のGタンパク)によるDAニューロンの脱抑制による放出の抑制。シナプス前およびシナプスニューロンを活性化して、脱抑制を引き起こし、DAニューロンの発火を間接的に増加させる。
ニコチンなど:α4β2ニコチン性アセチルコリン受容体を活性化させることによって直接DAニューロンの直接的な脱分極させる
コカイン、アンフェタミンなど:DAトランスポーターの関与
ベンゾジアゼピンによる嗜癖にはGABAA受容体が関与

オピオイド型薬物依存
 ←→エンドルフィン/受容体/オピオイド/耐性/麻薬反応性よる痛みの分類/がん性痛の治療
麻薬性鎮痛薬は、精神依存と身体依存を形成する。
がん性痛などの痛みの治療においては、基本原則を守った投与を行う限り、薬物依存症はほとんど発生しない。↓
一般には身体依存を形成する血中濃度より低濃度で鎮痛効果が得られる。
痛みの存在下では身体依存の形成は抑制される。
長期反復投与が突然中止されたとき、退薬症状を呈することはあるが、漸減しながら中止すれば、退薬症状が現れない。

 [オピオイドによる多幸感と精神依存の機序] 参考図<星薬科大学
精神依存は、脳内報酬系(中脳腹側被蓋野A10 ventral tegmental area: VTAから側坐核に投射している中脳辺縁系 ドーパミン(DA)作動性ニューロン Mesolimbic Dopamine System: MLD の活性化によって発現すると考えられている。
エンドルフィン
モルヒネ
中脳腹側被蓋野
介在ニューロン
→GABA→
中脳辺縁系DA作動性神
→DA→
側坐核
ニューロン
  ↑
ダイノルフィン ↑
多幸感
モルヒネによる鎮痛作用は主にμ受容体介して生じる。
モルヒネによる多幸感はDA作動性ニューロンの脱抑制によって引き起こされる側坐核ニューロンの興奮によるが、疼痛下ではドーパミンの放出量が抑制されるので、薬物依存が起こりにくい。↓
中脳腹側被蓋野では、細胞体にμ受容体を豊富に発現している介在ニューロンが局在している。
中脳腹側被蓋野の介在ニューロンは、抑制性のGABA作動性ニューロンであり、中脳辺縁系DA作動性ニューロンシナプス接続している。
中脳辺縁のDA作動性ニューロンは、側坐核に投射している。
中脳腹側被蓋野の介在ニューロンが、モルヒネやエンドルフィンによって抑制されると、中脳辺縁系DA作動性神経はGABAによる脱抑制機構により興奮する。
中脳辺縁系DA作動性ニューロンが活性化すると、投射先の側坐核からのDAの遊離が促進され、側坐核ニューロンが興奮して、精神依存が生じる。
μ-オピオイド受容体(MOR)を介したモルヒネ依存形成時においては、ラット脳内においてダイナミンの過剰発現が生じている(Mol Pharmacol 58, 159‐166, 2000)。

がん性痛などの痛みの治療においては、薬物依存症はほとんど発生しない。
モルヒネによる多幸感は、中脳辺縁系DA作動性神経が脱抑制されているためにドーパミン:DAの放出によって生じるものである。↑
がん性痛や炎症性痛下ではκ受容体神経系が亢進し、μ受容体の機能が減弱している。
疼痛下では、ダイノルフィンが放出されて、κ受容体に作用し、DAの放出が抑制される。
疼痛下では、μ受容体の機能が減弱していていて、DAの放出が抑制される。
疼痛下ではDAの放出が抑制されていて、側坐核ニューロが活性化されないので、モルヒネの精神依存が起こりにくい。
モルヒネ 非疼痛下 疼痛下
非投与 μ受容体とκ受容体の神経系バランスがとれている。 κ受容体神経系が亢進している。
投与 μ神経系が亢進して鎮痛作用が現れるが、μ神経系が過剰に興奮するため精神依存が形成される。 μ受容体神経系が亢進してバランスがとれるため、依存や耐性は形成されない。
κ受容体を活性化させる作動薬は、μ受容体作動薬モルヒネの主作用である鎮痛作用を増強し、副作用である鎮痛耐性や依存性を抑えることが明らかになっている。

モルヒネは用量依存的な精神依存を示すが、ケタミンを併用すると、ケタミンの用量に依存してモルヒネの精神依存が抑制される。精神依存では側坐核のNMDA受容体サブユニットのNR2BのC末端領域のPKCγが活性化されている。
 [オピオイドの身体依存の機序]
身体依存による退薬症状の発現には、青斑核を起始核として、大脳皮質に投射するノルアドレナリン神経系の活性化が重要とされている。
α2受容体作動薬やβ受容体拮抗薬がモルヒネの退薬症候を抑制することから、特にα2受容体やβ受容体の関与が示唆されている。
非競合的NMDA受容体拮抗薬であるケタミンやイフェンブロジルがモルヒネの身体依存形成を抑制することから、グルタミン酸神経系がNA神経系を調節していることも示唆されている。
オピオイドによる退薬症状では、あくび、瞳孔散大、流涙、鼻漏、食欲低下、嘔吐、腹痛、下痢などが生じることがある。


バルビツレート型薬物依存
 ←→バルビツレート誘導体/ベンゾジアゼピン型薬物依存/GABA受容体/GABA作動薬
 [バルビツレート誘導体薬物依存の作用機序]
バルビツレート誘導体は、中枢抑制作用が強いので、依存形成も高い。
身体依存の形成や退薬症候の発現には、GABAA受容体とNMDA受容体の機能的なバランスの変化が重要な役割を果たしていると考えられる。←非競合的NMDA受容体拮抗薬がバルビツレート型薬物の身体依存(退薬症候)を抑制する。
精神依存には、中脳辺縁DA神経系が関与しているかは不明である。←→バルビツレートは中脳辺縁DA神経系に対して抑制的に作用している。

 [バルビツレート誘導体の離脱の作用]
感受性の高い患者においては、薬物への精神依存が急速に発生することがあり、わずか数週間後でも服用を中止しようとすると、不眠症が悪化し、その結果として不安になり、いやな夢をみ、頻繁に覚醒し、そして早朝の緊張感が生じる。
身体依存の程度は用量と使用期間に関連している:例えば、ペントバルビタール1日200mgを何カ月も続けて服用しても重篤な耐性を惹起しない可能性があるが、1日300mgを3カ月以上服用したり1日500〜600mgを1カ月服用すると、薬を中止したときに離脱症候群を誘発することがある。
高用量で服用されていたバルビツール酸からの離脱は、振戦、せん妄に類似する、重篤、脅威的な、そして生命を脅かす可能性のある疾病の形で急性離脱症候群を引き起こす。
離脱は入院管理すべきである。一度離脱症候群が始まると、それを回復させるのは難しいが、綿密に管理すれば症状を最小限に抑えられる。
中枢神経系を再び安定させるには約30日かかる。ときには、1〜2週間にわたって適正に管理した後でも発作が起きることがある。短時間作用型のバルビツール酸塩を中止して最初の12〜20時間以内に、治療を受けていない患者はだんだん不安になり、振戦が起き、衰弱してくる。2日目までに、振戦はより顕著となり、深部腱反射が亢進する場合があり、患者はもっと衰弱してくる。2〜3日目の間に、1日800mg以上摂取していた患者の75%にけいれんが起こる。このけいれんから重積発作さらに死亡まで至ることがある。2〜5日間、放置しておくと、せん妄、不眠、錯乱、そして恐ろしい幻視と幻聴を生ずる。高熱と脱水症状がしばしば起こる。

ベンゾジアゼピン型薬物依存
 ←→ベンゾジアゼピン誘導体/チエノジアゼピン誘導体/バルビツレート型薬物依存/GABA受容体/GABA作動薬 参考1
バルビツレート誘導体と比較すると安全な薬剤であるが、精神依存、身体依存、耐性とも認められる。
モルヒネのような多幸を伴う耐性の増加や量の増加はなく、身体依存もすぐには起こらない。
常用量の反復では精神依存は生じるが、身体依存は生じることは少ない。
単独でも多い量や、常用量でも 2種類以上を 2カ月以上持続的に服用すると身体依存存が生じる。
ベンゾジアゼピン系薬剤では、臨床用量の範囲内でも長期の服用で身体依存が形成され、退薬症状が出現することが知られている。この状態は常用量依存(または臨床用量依存、低用量依存)と呼ばれている。投薬開始時の症状はなくなったのに、減薬や服薬中止をすると、もともとの症状に加えて、それまでにはなかった症状までも出現する。

ベンゾジアゼピンによる嗜癖のメカニズム--- Nature 463, 769-774 (Feb 2010)
GABAA受容体への結合するベンゾジアゼピン誘導体も、オピオイド型薬物依存と類似のメカニズム
中脳辺縁系腹側被蓋野:VTAのドーパミン:DAニューロンの脱抑制
DAニューロンの近傍のGABAAニューロン(介在ニューロン)上にある、α1 サブユニットを含むGABAA受容体に対する抑制を介して、腹側被蓋野のDAニューロンの発火を増すことが明らかになった。
ミダゾラム:MDZはDAニューロンの脱抑制を引き起こす。
Rectification Index---GluR2‐lacking AMPAの測定(依存症が起こるとGluR2‐lacking AMPAが増加する)BDZsのミダゾラムを投与することによってRIが増加。
α1のミュータントマウス(H101R)はRIの増加が起こらない---DAニューロンの脱抑制が阻害された。
免疫組織化学:α1サブユニットはVTAのGABAニューロンで多く発現。MDZによる作用では、α1ミュータント同士の比較では、DAニューロンは変化がなかったが、GABAニューロンでは顕著に伝達の変化が起こった。
GABAA受容体の中で脳に多く発現しているα1サブユニットは、GABAニューロンに対して抑制的に働き、これがシナプスしているDAニューロンの脱抑制を引き起こす。
In vivo single-unit recording:MDZを作用させたときの発火率を調べたところ、DAニューロンでは増加したが、GABAニューロンでは減少していた。そしてこの作用は、α1ミュータントでは阻害された。
行動実験:野生型では、MDZの入ったスクロースを好んで口にする行動変容が見られたが、α1ミュータントではこの変化が見られなかった。

半減期の短い薬剤ほど、休薬時の離脱症状の回避が困難である。重篤離脱症状を避けるために通常は漸減法を用いる。
 ←→睡眠導入薬の半減期による分類/抗不安薬の分類
半減期の長いもの
ロフラゼプ酸エチル、ジアゼパムベンザリン
乱用の程度が重篤でも、2〜3日毎に1日量を30〜50%減量することにより約3週間で成功する。
この場合最初に減量する割合を多くし、次第に少なくしていくのが良いとされている。
半減期の短いもの
レスミット、トリアゾラムエチゾラム、クロチアゼパム)等
離脱を注意深く慎重に行う必要がある。
半減期の短いものから、同用量の半減期の長いものに置き換えていくと、血中の変動もみられなくなる。
離脱症状の発現時期はその作用持続時間を反映する。
短時間作用型では1〜2日程度、長時間作用型では2〜5日程度あるいはそれ以上経過後に離脱症状が見られる。
離脱症状は発現後、数日でピークとなり、多くの場合1〜3週間かけてゆっくりと消失していく。
離脱症状を避けるためには、特に長期間服用後は、1週間毎に漸減(少しずつ減らす)して慎重に止めることが必要。
 [ベンゾジアゼピン系長期服用後にみられた離脱症状(退薬症状)] ←→離脱症状
非特異的症状:睡眠障害、不安、不快、筋肉痛、筋攣縮、振戦、頭痛、悪心:食欲不振・体重減少

知覚変化(量的):感覚過敏(音、光、臭い、触覚)、感覚鈍麻(味、臭い)

知覚変化(質的):動揺感、運動知覚障害
 視覚(対象動揺、平面のうねり等)
 味覚(金属製味覚、奇妙な味覚)
 聴覚(反響そして共鳴減少)
 嗅覚(奇妙な臭い)
その他:離人症(現実感消失)

主な不随現象:精神病、てんかん様発作
大麻←→カンナビノイド受容体/カンナビノイド
大麻は、アサの花・茎・葉を乾燥させ、細かく切り刻み、調理または燃やすなどして発生した煙を吸引して使用する薬理作用のある植物であり、嗜好品や医療薬として用いられている。
マリフアナは乾燥大麻であり、メキシコ・スペイン語で「安い煙草」を意味する。これは大麻の繁殖力が強く、野草として自生していたために安価に手に入ったことからメキシコでこの呼称が一般的になり、これがアメリカへと伝わって世界中にマリファナという呼称が定着した。
カンナビノイドは、大麻に含まれる化学物質の総称。大麻草から60種類を超える成分が分離されている。
大麻の有効成分の△-9 tertahydrocannabinolは、カンナビノイド受容体に作用し、主に行動に現れる。
マリファナ代謝産物が体内の脂肪組織に蓄積されるため、マリファナの形跡は、使用を中断してから1か月以内に尿の分析検査を行うことで調べることができる。
カンナビノイドは、がん性痛やAIDS患者における食欲増進、多発性硬化症のけいれん治療への治療を合法としている国もあるが、日本では認められていない。また、快楽を誘う薬物として違法に流通している。
医用以外に違法に使用されている大麻の多くは、乾燥させた植物の花と葉から作られたマリファナか、その植物をプレスした樹脂のハシシュとして通常吸われている。("グラス"、"ポット"、"メアリージェーン"、"ドゥウィービッジ"、"リーファ"、"ジョイント"、"ハシシュ")
マリファナは、タバコ、アルコールに次いで3番目に、米国人の若者の間で常用されているものである。約5,000万人が、1回以上マリファナを使用したことのあると推定されている。
 [精神症状]
ジョイントまたはパイプから煙を吸った場合には数秒〜数分以内で、ブラウニーなどのマリファナ入りの食物を食べた場合には摂取後30〜60分以内で現れる。吸入した場合は、ほとんどすぐに作用が感じられるため、それ以上の吸引を止めることで作用を調節できる。一方、経口の場合は、作用はゆっくり累積的に現れて長く続き、変動的であるため、不快感が出やすい。

吸入した場合には、夢幻様状態(dreamy state)となる。多幸感がえられ、酩酊状体で、幻覚、錯覚が見られる。通常、快適感や「ハイ」の感覚が生じる。知覚が敏感になり、時間や色や空間の認知が歪められる場合がある。

起こり得る有害作用:離人症、身体感覚の変化、見当識障害、急性のパニック症状または重度のパラノイアなど。また、重度のせんぼうや幻覚が現れることもある。そのようなケースでは、マリファナPCPなどの他の薬物との併用が疑われる。
コミュニケーション能力と運動能力が低下し、深部感覚やトラッキングが障害され、さらに一定の状況ではタイミングの感覚が変容する。ものを目で追うことができなくなり、時間が引き伸ばされたような感覚が起こるので、車の運転や重機類の操作をすることは危険である。
集中力が低下するため、記憶力は著しく低下する。マリファナの影響下で覚えた情報は、同じ状況で最もよく思い出すことができるという意味で、記憶力は「状況依存的」になる。

常用者では、活力の喪失、集中力の喪失、記憶減退(特に短期記憶)、仕事での能率の低下、長期的な目標に向けて努力する意欲の喪失を特徴とする、"無動機症候群"が認められることがある。
常用者では、マリファナの使用を中断すると、興奮、不眠症、興奮性、不安などの禁断症状が出ることがある。

 [身体症状]
頻脈、血圧上昇、結膜充血、口渇気管支拡張が生じる。さらに、一部の使用者では、気管支収縮や気管支痙攣につながる気管支の炎症が生じる。常用者では、咽頭炎副鼻腔炎、気管支炎、喘息がみとめられる。男性では、精子の運動性の低下や数の減少による一時的な不妊症が認められることがある。また、免疫系がおかされる場合もある。

 [マリファナの依存]
精神依存を引き起こすが、コカインよりも弱い。身体依存、耐性は引き起こさない。
しかし大量使用されたり、やめられないという訴えが起きることはまれである。大麻は社会的、精神的な機能不全の形跡なしで、ときに使用できることがある。多くの使用者に依存という言葉はおそらく当てはまらないであろう。
マリファナをやめても離脱症候群は全く発生しないが、多量使用者は薬をやめたときに睡眠が中断されたり神経質になると報告されている。
●コカイン ←→ 局所麻酔薬の歴史年表/局所麻酔薬/CART

我が国ではコカインは、覚醒剤とみなされ、「麻薬及び向精神薬取締法」および「覚せい剤取締法」で規制されている。
コカの葉から抽出されるトロパンアルカロイド
コカインは、最初に手術で使われた局所麻酔薬であったが、薬物依存があるために使われなくなった。(塩酸銀の5〜10%液を粘膜に、0.5〜4%液を点眼する。)
中枢神経に対したアドレナリン類似の刺激効果があり、脈拍促進、腱反射亢進、疲労感、睡眠、幻覚などが出現する。
コカインは興奮薬であり、覚醒レベルを高め、多幸感をもたらし、疲労感や飢餓感を忘れさせ、精神的な持久力を増強させる。
コカインやアンフェタミンのような中脳皮質辺縁系を刺激する薬剤では薬物依存や離脱症状が生じることが知られている。

 

コカインは興奮薬であり、多幸感をもたらし、疲労感や飢餓感を忘れさせ、精神的な持久力を増強させるため、日本でも第二次世界大戦中には積極的に利用され、現代ストレス社会でも中毒患者が少なくない
コカインの乱用は、近年、著しく増えている。アメリカの若者たちの間に広まった理由としては、若者があこがれるような大人たちによる使用、"比較的害が少なくて作用が強い高級な薬"というイメージ、コカインの供給量の豊富さと、それに伴う入手しやすさ、"クラック"の登場(煙を吸うタイプの、安価な濃縮コカインの登場で、ティーンエイジャーが買いやすくなった)、などが挙げられる。
コカインは、鼻から吸い込んだり、水に溶かして静脈注射したりして使用する。ヘロインと混ぜて静脈注射するのを"スピードボール"と呼ぶ。単純な化学的処理により、コカインはすぐに喫煙用に変えることができ、これはフリーベースまたは"クラック"と呼ばれている。

 [身体症状]
身体衰弱、不整脈など。

 [精神症状]
喫煙の形で使用すると、瞬間的な強い多幸感が得られる。
疲労感の消失、活力増大、不眠、気分高揚などの興奮症状がみらるが持続は短い。薬が切れると反動としてこれらの逆の症状が出る。
常用者には、気分が変わりやすい、うつ病睡眠障害、記憶喪失、引きこもり、学校や仕事や家族や友人に対する関心の喪失などの症状が見られることがある。

 [依存と耐性]
身体依存や耐性はほとんどないが、精神依存性は強い。

 [薬物依存の作用機序]
コカインは、ドーパミントランスポーターに直接結合してドーパミンの再取り込みを阻害する。その結果、シナプス間隙にドーパミンが蓄積し、ドーパミン受容体を過剰に刺激する。
コカインの覚醒作用は、腹側被蓋野から大脳皮質と辺縁系に投射するドーパミン作動性神経のシナプス前終末からのドーパミン放出を促進させることによって生じる。ドーパミンの取り込み抑制により、細胞外ドーパミン量を増加させる。

コカインを使い始める契機は、快情動と結びついた正の強化であるが、薬が止められなくなる理由は、むしろ禁断症状(不安やうつ状態など)と結びついた負の強化である。
コカインによる精神依存症状は、脳の中で快感を司る報酬領域である側坐核ドーパミン神経終末で起こる。
コカインの薬物依存は、トランスポーターによるドーパミン取りこみ阻害によって起こる。
 コカイン乱用者の脳は、モノアミン小胞体トランスポーター(vesicular monoamine transporter VMAT)2 のレベル、およびドーパミン全体量が有意に減少している(American Journal of Psychiatry, 160: 47-55)。
 ←→コカイン依存症状はドーパミントランスポーター阻害剤で緩和できることが知られています。
アンフェタミン覚せい剤←→アドレナリン作動薬/ノルアドレナリン/中枢神経興奮剤/交感神経作用薬/CART
アンフェタミン覚醒剤は、アンフェタミンメタンフェタミン(スピード、クリスタル、シャブ、アイス等)等の化学合成薬物の総称であり、メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA、エクスタシー、アダム)も含まれる。アンフェタミンとMDMAは欧州地域で最も乱用されている。アンフェタミン類は通常は経口摂取されているが、鼻から吸う、煙を吸う、注射するといったタイプのものもある。
市販(OTC)のアンフェタミン類似薬(ベンゼドリン、デキセドリン、メセドリン等一般に、カフェインやフェニルプロパノラミンを含み、食欲抑制薬または眠気ざましとして売られている)もよく乱用されている。アンフェタミンOTC薬を大量に服用した場合も、アンフェタミンと同じような強い作用を引き起こすことがある。

 [作用機序]
アンフェタミンは、間接型アドレナリン作動薬であり、ノルアドレナリンドーパミンの遊離の促進、再取込み阻害作用とモノアミンオキシダーゼ:MAO阻害作用によるシナプスでのカテコールアミン濃度上昇により、交感神経刺激作用と中枢興奮作用を発現する。
腹側被蓋野から大脳皮質と辺縁系に投射するドーパミン作動性神経のシナプス前終末からのドーパミン放出を促進することで、覚醒作用や快の気分を生じさせる。
アンフェタミンの中枢興奮作用は交感神経刺激作用より低濃度で現れ、持続時間も長い。
コカインやアンフェタミンのような中脳皮質辺縁系を刺激する薬剤では薬物依存や離脱症状が生じることが知られている。
MDMAはカテコラミンとセロトニンの放出を起こすことで作用する。

 [身体症状]
血圧を上昇させ、心拍数を増加させる作用がある。
心臓発作のおそれがあり、健康な若いスポーツ選手が心臓発作を起こすことがある。
脳血管が破裂するほど血圧が高くなり、脳卒中を起こすことがある。
MDMAなどの薬物は、換気の悪い暖かい室内、激しい運動をしているとき、汗を多量にかき水分補給が十分でないときなどの条件下で使用すると合併症が生じやすくなる。

 [精神症状]
多幸感、眠気や疲労感がとれ(覚醒作用)、集中力を高め、食欲を減退させ、身体機能を高める。多幸感、陶酔感、脱抑制(理性による抑制が失われた状態)を誘発することもある。自信ならびに運動機能の増大等があるので、ドーピングに使われることがある。
大量の覚醒剤を数カ月以上使用すると、統合失調症のような症状(幻聴、被害妄想、追跡妄想など)が出てくることが多い。これに、粗暴な性格が出て、暴行などに及ぶことがある。
常用者には、興奮性、落ち着きなさ、睡眠障害、振戦、瞳孔拡大、皮膚の潮紅、徐々にすすむ体重減少などの症状がみられることがある。

薬効時の常同行動は覚せい剤精神病の前駆症状 参考1
 覚せい剤に依存した状態では、第1相の「連用の時期」、第2相の「つぶれの時期」、第3相の「薬物渇望期」という三相構造が認められるようになる。第1相の「連用の時期」には2、3日間、覚せい剤を連用する。その間、覚せい剤のもつ強力な作用のため、ほとんど眠らないし、食べない。最初のうちは目立たないが、覚せい剤を打った直後には、「常同行動」といって、つまらないことに熱中することがみられる。鼻歌交じりであてもなく街中をドライブしたり、掃除をしたり、パチンコなどのゲームに熱中したりする。3、4時間して、作用が切れてくると周囲のなんでもない物音などに気を回して疑い深くなる。しかし、覚せい剤を入れれば、ケロリとして、「常同行動」に熱中する。
 このような「常同行動」が発現すると、幻覚・妄想状態も直に発現してしまう。自分の行動が監視されていると言って隠しカメラを探したり、盗聴されていると言っては電波探知機で盗聴器を探そうとしたり、付き合っている女性が浮気をしていると言って、常同行動によるものすごく酷い折檻をしたりするようになる。薬効時にこのような「常同行動」が認められるようになったときには、<覚せい剤精神病の前駆状態>とみなすことができる。
微調整? tweaking↑ ←→punding
薬物の副作用による常同行動
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 [薬物依存と耐性]
強い精神依存を形成し、耐性も形成するが、身体依存は生じない。
覚醒剤の中止により症状は消失していきますが、何年経っても症状が見られることがある。

 [離脱症状]
アンフェタミンの摂取を突然に中止すると、覚醒作用と正反対の症状が生じる。依存が生じている人には、疲れたり眠くなるといった症状が、薬をやめてから2〜3日続く。特に抑うつ傾向のある人は、この薬物をやめるとうつ病になるおそれがあります。自殺の衝動に駆られる場合もあるが、数日間は自殺を試みるエネルギーすらなくなります。基礎疾患のうつ病が出現したり、重篤抑うつ反応が促進されることがある。多くの人においては、離脱後2〜3日間の強度の疲労ないしは傾眠傾向と精神的抑うつが続く。アンフェタミンはゆっくりと成立する耐性を引き起こす。

1887年 Lazăr Edeleanu(ラザル・エデレアーヌ 1861〜1941, ルーマニアの化学者)がベルリン大学アンフェタミンを合成した。
1893年 長井長義(1845〜1929, 日本薬学の開祖)と三浦謹之助がエフェドリンからメタンフェタミンを合成した。
1919年 緒方章がその結晶化に成功した。
1928年 エフェドリンの代用の吸入式喘息薬として、アンフェタミンが初めて製品化された。USA by Smith, Kline & Frenchがベンゼドリン(Benzedrine®)として販売した。
1941年 武田長兵衛商店(武田薬品の前身)がアンフェタミン製剤のゼドリン®、大日本製薬(現在の大日本住友製薬)がメタンフェタミン製剤をヒロポン®を発売した。
アンフェタミンに興奮作用があることが知られるようになり、「スーパーマンの薬」としてトラック運転手が使用するようになったり、食欲減退作用があることから「ヤセ薬」として処方されるようにもなった。
国防省は、第二次世界大戦ベトナム戦争湾岸戦争を通じて、兵士たちに大量のアンフェタミンを配布し続けてきた。
1951年 覚醒剤取締法制定
1950年代から1960年代にかけて、疲労、肥満、軽度の憂うつなどの症状の改善のためによく処方された。
1959年 米国食品医薬品局(FDA)はベンゼドリン吸入機を禁止して、アンフェタミンの処方を制限した。
1960年 ローマオリンピックで、アンフェタミンを投与されたデンマークの自転車選手が競技後に死亡して以降、ドーピング防止策が進められるようになり、1974年にアンフェタミンは禁止薬物に指定された。


アンフェタミン Amphetamine
合成覚醒剤、中枢神経興奮剤
フェネチルアミンの誘導体、β-フェニルイソプロピラミンのラセミ
ドーパミンから水酸基を取った構造で、アンフェタミンにメチル基をもうひとつつけたものがメタンフェタミン
覚醒剤取締法で規制されている薬物
アメリカでは硫酸デキストロアンフェタミン(Adderall®、もしくはそのジェネリック品)が ADHDナルコレプシーの治療に用いられている。
日本以外の国々では、メチルフェニデートリタリン®、コンサータ®など)と共に、アンフェタミンADHDの標準的な治療薬である。

中毒性が強いことが明らかになり、現在では覚醒剤取締法によって一般の使用は禁止されている。法的規制が強化されたにもかかわらず、アンフェタミンは、若者の間で、マリファナに次いで2番目に多く使用されている薬物となっている。
メタンフェタミン Methamphetamine 参考1
覚醒剤取締法で規制されている薬物
フェニルメチルアミノプロパン
アンフェタミンに -CH3 がついたもので、強い中枢興奮作用を持つ。
メタンフェタミンは生体内で脱メチル化されアンフェタミンとなる。
エフェドリンから合成された。
小胞体へのドーパミン貯蓄を阻害してシナプス前細胞の細胞質におけるドーパミン濃度を上昇させると共に、ドーパミントランスポーター:DATを逆流させることにより、神経終末からドーパミンノルアドレナリンセロトニンなどのアミン類を遊離させ、間接的に神経を興奮させる。
さらに、モノアミン酸化酵素の阻害作用によって、シナプス間隙におけるアミン類の濃度を上昇させる作用を併せ持つ。
メタンフェタミンの反復使用は、DATやドーパミンD1受容体を減少させる。
ミノサイクリンの前投与と併用によって、DATの減少やD1受容体の減少を抑えることができる。

強い中枢興奮作用および精神依存、薬剤耐性により、反社会的行動や犯罪につながりやすいため、日本では覚せい剤取締法により覚醒剤に指定されている。
第二次世界大戦中は、日本のみならずアメリカ、イギリス、ドイツなどで使われていた。
日本では1941年に「ヒロポン(大日本製薬→現大日本住友製薬)」として販売が開始された。 参考1
メタンフェタミンは、その大部分が東アジア及び東南アジア地域で密造・取引され、北米地域や東アジア地域において最も乱用されている。
○MDMA(通称:エクスタシー)
3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン
3,4-methylendioxymethamphetamine
英語名の頭文字から「MDMA」と呼ばれる。
麻薬及び向精神薬取締法により規制対象の合成麻薬
メタンフェタミンに非常に類似した物質。
分子構造からしばしば覚醒剤に分類されるが、他の覚醒剤とされる薬物とは主だった作用機序が異なる。また、特有の精神作用により幻覚剤にも分類される。
ヒト以外の霊長類に数回連続してMDMAを投与したところ、比較的軽度のセロトニン作動性神経毒性に加えて、重度のドーパミン作動性神経毒性が誘発された。[Science/PubMed]
脳内のセロトニンを過剰に放出することにより、多幸感、他者との共有感が生じる。皮膚感覚が敏感になる、感情の増幅、瞳孔散大、血圧上昇、鼻や喉の粘膜の乾燥。
MDMAを経口的に摂取すると30分〜1時間ほどで前述のような精神変容が起こり、それが4〜6時間程度持続するとされる。
脳の神経細胞を破壊することで、記憶への障害、幻覚、妄想などの症状を引き起こす。
大量摂取した場合の症状はLSDに似ている。過剰摂取は死を招くことがある。
メタンフェタミン等と同様に、交感神経刺激作用によって体温や血圧が急激に上昇したり、心悸が亢進し、脳出血心筋梗塞や心停止、高熱による臓器不全などを引き起こすとされる。
催奇性なども報告されている。
身体的耐性や依存性は生じないが、常用者は精神依存をおこす可能性がある。
1985年まで主にアメリカにおいて心的外傷後ストレス障害PTSD)の治療に用いられてきたが、現在ではほとんどの国でMDMAは違法薬物とされている。
2009年8月3日押尾学が使用して逮捕された。
メチルフェニデート

●幻覚発現薬 Hallucinogens
幻覚薬にはリゼルギン酸ジエチルアミド(LSD-25)、サイロシビン、メスカリン、イボガイン、2,5-ジメトキシ-4-メチルアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)やその他の代用アンフェタミン様化合物が含まれる。幻覚薬を薬を使用しても、幻覚を引き起こさないこともある。
NMDA受容体の非競合的拮抗薬のPCPケタミン、MK-801(ジゾシルピン)なども幻覚発現薬物である。

 [症状と徴候]
少量では、浮わついた多幸症が起こり、しばしばそれに続いて不安発作が起きたり、気分が不安定になる。
多量は、外界から引きこもった緊張病状態、運動失調、構音障害、筋緊張亢進とミオクローヌスを引き起こす。
唾液の過剰分泌によって、口渇を引き起こす。
異常な回転性や垂直性眼振が現れ、診断の助けとなる。
通常、心血管系は侵されない。非常に大量では、昏睡、けいれん、重篤な高血圧が生じることがある。
PCP使用後には長期の精神病状態が起こると報告されている。

幻覚薬は、知覚や気分の変容(通常は多幸感、ときには抑うつ)として現れる中枢神経系の興奮状態と自律神経系の活動亢進を引き起こす。真性幻覚は明らかにまれである。
幻覚薬は、作用のピーク時によくパニック発作を起こす("バッドトリップ(恐ろしい幻覚体験)")。
幻覚薬への精神依存は人によってまちまちであるが、通常は軽度であり、この薬を急にやめたときに身体依存の徴候が現れることは確認されていない。
フラッシュバック:幻覚薬、特にLSDを長期間または繰り返しの使用後に、断薬してから長期間を経た後に、幻覚体験が繰り返されること。これらのエピソード(フラッシュバック)は最も一般的には視覚的錯覚であるが、実質的に全ての感覚(自己イメージまたは時間もしくは空間の知覚を含む)の歪みや幻覚を含むことがある。フラッシュバックは、マリファナ、アルコール、バルビツール酸塩の使用、ストレスや疲労や、あるいは明らかな原因がなくても起こることがある。フラッシュバックのメカニズムはわかっていない。フラッシュバックは6〜12カ月後には消えてしまう傾向がある。

 [幻覚作用の発現機序]
幻覚作用の発現機序は、5-HT神経系が関与すると示唆されている。5-HT神経系の起始核である縫線核の神経活動を抑制し、さらに投射先である中脳における5HTの代謝回転を抑制する。
LSD型幻覚発現薬の精神作用は、5HT神経系のオートレセプターに5-HTが作用することによって、5-HT神経活動の低下によって発現すると示唆されている。
NMDA受容体のチャネルの遮断も、幻覚発現に何らかの役割を果たしていると考えられる。

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○D-リゼルグ酸(リゼルギン酸)ジエチルアミド lysergic acid diethylamide: LSD-25
C15H15N2CON(C2H2)2
合成幻覚剤:麦角アルカロイドのエルゴメトリンを加水分解して得られるインドール母核部のジメチルアミド
リゼルグ酸のジエチルアミド体
リゼルグ酸はトリプトファンとメバロン酸由来のジメチルアリルピロリン酸(DMAPP)から生合成される。DMAPPが結合したジメチルアリルトリプトファンが脱炭酸され、閉環してリゼルグ酸を生成する。この経路ではトリプタミンが前駆体でない点が他のインドールアルカロイドの生合成と大きく異なる。
極めて強い幻覚薬で、ごく微量で作用が現れる。
脳内のセロトニンの働きを抑制する。
LSDを強力な幻覚作用、統合失調症症状を起こすので、麻薬指定にされている。
LSDは化学合成されて作られるが、麦角菌やソライロアサガオ、ハワイアン・ベービー・ウッドローズやハワイアン・ウッドローズ等に含まれる麦角アルカロイドからも誘導される。
1935年 Walter Abraham Jacobs(1883/12/24〜1967/7/12, ニューヨークのRockefeller Instituteの化学者、Hermann Emil Fischer↑ Pの下で学位取得)が麦角アルカロイドの有効成分にレゼルグ酸(lysergic acid)とイソレゼルグ酸(isolysergic acid)が含まれることを報告した。
1938年 Albert Hofmann(P 1906/1/11〜2008/4/29 スイスバーゼルのSandoz研究所-現 Novartis研究所)が、分娩促進剤の開発の過程で、ライムギに寄生する麦角菌に含まれるリゼルグ酸ジエチルアミド(lysergic acid diethylamide)からLSDを合成した。
1943年 Hofmannは自分で試してみて、強い幻覚作用があることを発見した。Professor Ernst Rothlin(Sandozの薬理学教授)の指導のもとに、lysergic acid amide seriesの研究が行われていた25番目の化合物だったので、その頭文字Lと、サンド社のSから、LSD-25と名づけられた。
1960年代 アメリカで起きたフラワー・ムーブメントによって『精神の解放、自我の発見』に役立つと言うことから、ロックミュージシャンや芸術家、知識階級に広まった。幻覚作用が個人によって著しく異なり、このために死に至る数々の悲劇を生んできている。
1967年 アメリカ政府がLSDの使用を禁止した。
1970年 日本はLSDを麻薬指定した。
ストリートでは、吸い取り紙やオブラートに染み込ませてドロップを包んで売っていたりする。錠剤、カプセル、液体、角砂糖、四角いゼラチンなどに簡単に形を変えられるほか、切手、チューインガム、固い砂糖菓子、ソーダ・クラッカーなどに吸着させることもできる。一般的な用量は50-100マイクログラム。

 [作用]
LSDの初期症状は 軽い痺れ、発熱 嘔吐、頭痛から始まり脈絡のない思考と自己のコントロールが出来なくなる。
効果は1時間以内に感じられ、2〜12時間持続する。知覚が増強され、色はより鮮やかに、物はよりくっきりと、時には歪んで見えたりする。時間や距離の感覚が変化する場合もある。自分の体が軽くなったり、重くなったり、ぐにゃりと歪んだりするように感じられることもある。ものを考えたり注意を集中するのは難しく、短期記憶力が低下する。喜怒哀楽が極端に激しく変化する。過剰摂取による死亡例は知られていないが、この薬物が引き起こす錯乱が原因の事故死は起きている。
長期作用すると、欲や関心の減退、長期にわたる抑鬱や不安。服用中の幻覚が、数日、数週間、ときには数ヶ月もたって突然再現する「フラッシュバック現象」。妊娠中に使用すると自然流産や致命的な胎児奇形の発生率が高くなる可能性がある。
幻覚薬への反応は、使用者の期待、知覚の歪みに対処できる能力、そして環境を含むいくつかのファクターに左右される。LSDに対して有害な反応(不安発作、極度の恐怖やパニック状態)が起こることは滅多にない。これらの有害作用は安定した環境で適切に管理すると急速に消退する。一部の人では障害が持続し、頑固な精神病状態さえ示すことがある。薬物使用がもともと潜在的にあった精神病を結実させたり、顕在化させたりするのかどうか、あるいは使用前に安定していた人においてこの状態を引き起こすのどうかは解明されていない。
 [依存、耐性、離脱作用]
強い耐性が形成されるが、すぐに消失する。他の薬にも交叉耐性がある。この薬の主な危険性は、危険を招く判断や事故を起こすような心理的作用と判断力障害である。
LSDを長期間または繰り返し使用している一部の人たちは、断薬してから長期間を経て明白な薬の作用を体験することがある。フラッシュバックは最も一般的には視覚的錯覚であるが、実質的に全ての感覚(自己イメージまたは時間もしくは空間の知覚を含む)の歪みや幻覚を含むことがある。フラッシュバックは6〜12カ月後には消えてしまう傾向がある。
○メスカリン Mescaline 参考1
トリメトキシフェネチルアミン、化学名3,4,5-trimethoxybenzaldehyde、分子式C11H17NO3. 分子量211.26.
骨格名:フェネチルアミン、生合成経路:シキミ酸
カリフォルニアから中米、南米に自生するサボテンのペヨーテから抽出される幻覚性アルカロイド
ニューメキシコ州のメスカレロ・アパッチ(ここからメスカリンの名がついた)のシャーマンがペヨーテの幻覚作用によって精霊「メスカリト」と交信していたことに因んで、その名が付けられた。もともとメキシコのアパッチが使用していた。

ペヨーテから抽出されたものは、味も外観もまるで茶色い土のようで苦い。乾燥したペヨーテをそのまま口に含み、柔らかくなるのを待ってから、咀嚼して飲み込む、あるいはそのまま飲み込む。摂取後、嘔吐してしまうことがある。
カプセル、錠剤、粉末などもある。合成の硫酸メスカリンは白色、針状結晶だが、味はほぼ同様。末端で密売されている合成メスカリンの90%は偽物で、PCPLSDなどを偽って売っている。

1890年 Havelock Ellis(1859/2/2〜1939/7/8, 英国の精神科医、性の心理学者)とSilas Weir Mitchell(P 1829/2/15〜914/1/4, 米国の内科医、神経学者)が、ペヨーテの幻覚作用について研究を始めた。
1896年 Arthur Hefter(1860〜1925, ベルリン大学薬理学教授)Louis Lewin(1850〜1929, ドイツの薬理学者、毒学者、向精神薬研究の第一人者)が有効成分のメスカリンを抽出、分離した。1897年に、その結晶を服用すると、変転きわまりない極彩色の幾何学模様や景色の幻視や、時間感覚のゆがみなどが起きることを確かめた。
1919年 Ernst Späth(1886/5/14〜1946/7/30, ウィーンの化学者)がペヨーテの有効成分であるメスカリンの化学構造を明らかにし、その後メスカリンが合成されるようになった。
1937年 Heinrich Klüver(P 1897/5/25〜1979/2/8 心理学者)とPaul Bucy(P 1904/11/13〜1993 シカゴの神経学者)はメスカリンが海馬の働きを撹乱して幻覚を起こすのであろうという仮説をたて、この仮説を検証するために、アカゲザルの両側側頭葉を切除したが、予想に反して、クリューバー・ビューシー症候群を発見するに至った。

統合失調症のような症状を生じるメスカリンが、カテコールアミンの一種であることから、統合失調症ドーパミン過剰説が提唱された。一方、LSDやシロシンなどインドール核をもつ幻覚剤も、神経伝達物質であるセロトニンの強力な拮抗剤であるため、統合失調症セロトニン説がとなえられた。しかし、その精神症状が分裂病とは異質であることから、現在では躁鬱病との関連が注目されている。
Aldous Huxley (オルダス・ハクスリー イギリスの作家)の「知覚の扉 The doors of perception」(1954年)は、メスカリンによる幻覚とその芸術的効用を記述している。J.P.サルトルも服用して、その意識経験の意味を記述している。Henri Michaux(アンリ・ミショー ベルギー出身の詩人・画家)も服用していた。
アメリカではペヨーテを麻薬指定しているが、Native American church(NAC)の行う宗教上の行事での使用は認められている。

 [症状]
効果はゆるやかに現れ、10-18時間持続する。
メスカリンの「トリップ」:幻覚作用は、LSDに比べると、4,000分の1程度。
幻覚的感覚、精神分裂病様の傾向を示し、発作的に不機嫌になったり、何の理由もなく激昂したり、不安、混乱、抑鬱となる。
失見当識。短期記憶や注意力の低下。
瞳孔散大。発熱、振戦、悪心、不眠、嘔吐、食欲不振が起きることもある。多量摂取は頭痛、皮膚の乾燥、血圧および脈拍の低下、呼吸減少をひきおこす。
 [依存、耐性、離脱作用]
服用後、数日は摂取をやめないと再び効くようにならない。この耐性はサイロシビン、LSD、DMTにも及ぶ。連用は精神依存をもたらす可能性があるが、身体依存は現在のところ知られていない。

ペヨーテ Peyote、Peyotel 参考1/ 2/ 3/ 4/ 5
テキサス州南部からメキシコの東シエラ・マドレ山脈一帯に自生しているとげのないサボテン
学名:Lophophora williamsii(Lem.)J. Coult 和名:烏羽玉(ウバタマ)
学名の「Lophophora」は、ギリシャ語"lophos"(とさか)+"phoreo"(着ける)に由来し、いぼの先に生じる綿毛に因んで名づけられたようである。
「ペヨーテ」は、Nahuatl ナワトル語「Peyotl ペヨトル」から派生した言葉と言われている。英名では、「Peyote」と呼ばれるほかに、「Dumpling cactus"(ゆで団子サボテン)」とも呼ばれている。
烏羽玉は、日本では一般の園芸店で売られている。弾力ある肉質で、大福餅のような形。緑灰色の地肌に白粉を一面に吹き、とげはなく、所々に白い羊毛束が生えている。成球で8〜10cm位。高さは3cmほどになる。
花期は、春〜夏で、茎の頂に白色〜淡桃色の花をつける。
茎幹は扁球形であるが、はじめ単幹であり、その後5〜6頭に分かれる。頂部には、葉の変形した黄白色の毛が群生している。
薬用や儀礼用に用いるのは茎頂部。茎頂部を輪切りにして、日干しにして「メスカルボタン(Mescal Buttons)」というものを作り、保管する。メスカルボタンの状態で効力が数ヶ月保持でき、宗教儀式の際にシャーマンが儀式に参加する者に与える。

強い幻覚作用を示すアルカロイドのメスカリンが含まれていて、「七色の夢を見る」と言われている。
メキシコの原住民アステカ Azteca 族やウイチョル Huichol 族などが、16世紀中ごろから宗教儀式や医療、占いなどに用いていた。この文化はメキシコから北上して、18世紀に入るとアパッチ族に拡がり、アメリカ、カナダに及ぶ文化圏を作った。現在も、メキシコ中西部のハリスコ州からナヤリット州の山岳地帯に住む先住民に愛用されている。
マヤ・アステカ文明では、ペヨーテとともに、サイロシビンを含むテオナナカトル(シビレタケ属きのこの)を宗教儀式に使っていた。
メキシコの孤高の民ウイチョル族にとっては、ペヨーテは、「神」そのものである。彼らは太古の昔から、ペヨーテに、ヒクリ・ワナメ Hikuli waname という高い位を与え、神聖視し、崇めてきた。祭司であるマラカメは、神々へ祈願し、感謝を捧げ、神話を歌う。このようにして、神々と交信し、それに従って人々の生活を指導し、病気を治す。ウイチョルの居住地西シエラマドレ山脈付近にはペヨーテの自生地がないため、ウイチョル族の男たちは毎年10〜2月の乾季に、400キロの道のりを歩いて、巡礼の聖地「ウィリクタ」までペヨーテ採集するための旅に出かける。ペヨーテを村に持ち帰り、盛大な祭りをする。燃える焚火を囲んで、村人十数人の男が輪になり、メスカルボタンと鹿肉のスープを食べて、恍惚状態になり、豊作を祈願する儀礼的舞踏を神に捧げる。このような「ペヨーテ・セレモニー」は、現在もなお、ウイチョル文化の中心になっている。
メキシコのタラフマレ族もペヨーテを崇拝していた。タラフマレ族はペヨーテに限らずPeyotilloと呼ばれるPelecyphora aselliformisやTsuwiriiと呼ばれるAriocarpus retususなど他の種も使用している。これらのサボテンは引き抜かれても数ヶ月は生きる強い生命力を持ち、食べると神の領域といわれる陶酔状態になるので、「半神半人」として高い尊敬が払われている。

コロンブスアメリカ大陸の発見が契機になって、メキシコの宗教やその儀式などがヨーロッパに紹介された。スペインのフィリップ2世の侍医フランシスコ・エルナンデスや、フランシスコ派の修道士ベルナンディーノ・デ・サハガンたちは、アステカ人が祭祀や戦いの時などに、ペヨーテやサイロシビンを使用し、この幻覚物質によって昂揚感や陶酔感を得ていたこと伝えた。
北メキシコを支配したスペイン人のカトリックの宣教師からは、ペヨーテを使った宗教儀式を「異教のもの」として排除する動きが出て、何度もペヨーテ使用の禁止令が出された。しかしこの試みは成功せず、結局両者の習慣が合わさり、ペヨーテが聖餐式のパンとぶどう酒の代わりに使われるようになった。
このような独特の宗教形態はやがて北上して、1880年前後にアメリカインディアンのカイオワ族またはコマンチ族に広まった。カトリック教会はペヨーテを「悪魔の根」として使用を禁止しようとしたが、インディアンたちは、古代メキシコの信仰やキリスト教、それに地方の俗信などの三者が渾然一体となったNative American church(NAC)を設立し、法廷闘争に持ち込んだ。1918年にキリスト教伝統宗教の融合ということで、正式な宗教として承認された。
NACは1960年代にはロッキー山脈からミシシッピ川流域に住むアメリカインディアンの主要な信仰となっている。NACの行う宗教上の行事での使用は認められている。現在NACは、北アメリカ全土で数百万のメンバーがいる。
1994年の「AMERICAN INDIAN RELIGIOUS FREEDOM ACT(アメリカン・インディアンの宗教の自由を認める法)」いわゆる「ペヨーテ法」により、これまで部族に属しているかもしくはネイティブ・アメリカン・チャーチに属するインディアンだけにペヨーテの宗教儀式における使用が認められた。
2004年6月にユタ州高等裁判所は、人種の如何を問わずネイティブ・アメリカン・チャーチの信者がペヨーテ peyote を使用するのを承認したとする判決を下したが、連邦政府はこの件に介入する動きを見せはじめた。(ソルト・レイク・トリビューン紙)。連邦政府の当局者はあくまでもそれを「連邦法が認めるところの部族に属するインディアン」という言言葉の定義を盾に州最高裁の判決に抗しようとしているのである。
○サイロシビン(シロシビン) Psilocybin マジックマッシュルーム
C12H17N2O4P
マヤ・アステカ文明の宗教儀式で、ペヨーテとともに使われていたキノコのサイロシブに含まれる幻覚アルカロイド。違法に、マジック・マッシュルーム magic mushrooms として出回っている。
生合成的にトリプトファンに由来するアルカロイドで、脱炭酸されたトリプトファンはトリプタミンとなり、それがインドールアルカロイドの前駆体となる。
シロシビンの毒素はトリプタミン誘導体で、その構造は脳内の神経伝達物質であるセロトニンと類似しており、中枢神経系のセロトニン受容体に作用して幻覚・幻聴などを引き起こす。
末梢神経系では、セロトニン-ノルアドレナリン経路を介して作用すると考えられている。
LSDと類似の構造で、効能も似ているために代替薬品としても用いられるが、日本では麻薬及び向精神薬取締法により、シロシン共に厳しく規制されている。
麻薬、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令が「麻薬、麻薬原料植物、向精神薬及び麻薬向精神薬原料を指定する政令」と改められ、平成14年6月6日以降サイロシビン又はサイロシンを含むキノコ類が麻薬原料植物として規制された。栽培はもちろん、個人輸入も、所持も禁止されている。

サイロシブ(シロシブ)
ハラタケ科シビレタケ属 Psilocybe。アステカ帝国で使われたナワトル語では、テオナナカトル teonanactl(神の肉、聖なるキノコ)。
メキシコ及びアメリカ合衆国南部原産のサイロシブ・キューベンシス Psylocybe cubensisやサイロシブ・メキシカーナ Psylocybe mexicanaなどを含む、少なくとも20種類以上のキノコに含まれる。
シビレタケ属のキノコは、メキシコで30種、南アメリカで40種、そしてヨーロッパや日本でも数種の計80種以上が確認されている。メキシコのオアハカ州グアテマラの高地に幻覚性キノコが豊富に自生し、「サン・イシドロ」とよばれるサイロシブ・キューベンシス Psylocybe cubensisや、「小鳥」とよばれるサイロシブ・メキシカーナ Psylocybe mexicana、「断崖」とよばれるプシロキベ・カエルレスケンス Psylocybe.caerulescensなどを含む、少なくとも20種類以上のキノコにサイロシビンやサイロシンが含まれる。

アステカ人が「かわいい花」、または「陶酔させる花」とよび、宗教儀式に使用していた。「コントロール不可能な笑いや狂乱状態を引き起こす黄色いキノコや、悪魔や戦士などのさまざまな幻像を生じるキノコ、そして主要な儀式やその前夜祭で用いられ、パニック状態を引き起こした焦げ茶色のキノコがある。」と記されている。
アステカの征服者たちは、理性をなくし、悪魔と交流する不届きな行為として、激しく弾圧した。
1953年にR. Gordon Wasson夫妻(en:米国のアメリカの幻覚性キノコ研究者)夫妻が、テオナナカトルを用いた儀式の体験談を発表し、「聖なるキノコ」が世界的な関心を集められた。
1956年にRoger Heim(パリ国立博物館のキノコ分類学者)は、これらがハラタケ科シビレタケ属 Psilocybe のキノコあることを確認
スイスのAlbert Hofmann(P 1906/1/11〜2008/4/29 LSD↑の発見者)は、これらのキノコから、脳内の神経伝達物質であるセロトニンに類似したトリプタミン誘導体サイロシブ、サイロシンの抽出、分離に成功した。
現在もなおマサテコ族チナンテコ族、サポテカ族などの呪術師たちによって、宗教および医療目的で使用されている。

テオナナクトルそのものを室温で乾燥させ、あるいは生のままでも摂取できる。乾燥したキノコは何年も有効。乾燥茸を一度メチルアルコールに浸した後、蒸発濃縮させ透明な液体の中からサイロシビンを取り出すこともできます。
粉末状胞子やキノコの乾燥したものを挽いて粉末にしたものをカプセルに詰められてたものも、不法に出回っている。「サイロシビン」と称して売られているものの多くは、PCPLSDであることが多い。

摂取後、約30分で効果が現れはじめ、数時間持続する。幻覚、酩酊状態、狂乱、発熱などが生じる。感覚が次第に低下し、万華鏡のような虹色の模様が視界をよぎるのを経験する。
大量摂取は知覚の歪み、眩暈、胃のむかつき、口の周りが痺れたような感じ、嘔吐、体の震え、あくび、顔面紅潮、発汗などの症状を引き起こす。
サイロシビンの幻覚作用はLSDに比べると、100〜200分の1の強さ。
摂取後、2週間から4ヶ月後に、飲酒やストレス、睡眠不足、他の薬物の服用などによって、フラッシュバック現象が起こることがある。
いったん服用したら耐性が生じ、数日おかないと有効とならない。耐性はメスカリン、LSD、DMTに対しても及ぶ。常用すると精神的依存を生じる。肉体的依存性は現在のところ知られていない。
○イボガイン ibogaine →参考1
12-methoxyibogamine
インドールアルカロイドの一種で長時間作用性の幻覚誘発剤。
天然にはキョウチクトウ科タベルナンテ属のイボガ(Tabernanthe iboga, アフリカ西部産の多年生小潅木)の根皮に多く含まれる。
1800年代中ごろのアフリカ、ガボンではブウィティ(Bwiti)教の儀式に使われていた。
アメリカ合衆国においては、1966年にLSDやメスカリンなどと共に規制物質法においてスケジュールIに分類されているが、欧州やカナダでは禁止されていず、イボガインの作用に科学的な認識が高まっている。
薬物依存症患者の治療や慢性痛の治療の有効性に期待が持たれているが、多量に摂取すると麻痺、痙攣、死を引き起こすことがある。
Xファイル、Season 8、エピソード7 「第三の目 (Via Negativa)」。(2000年12月17日初回放送)ある連続殺人者・カルトリーダーがイボガインを儀式に使い、犠牲者を殺害した。

1901年 DybowskiとLandrin、およびHallerとHeckelによって、それぞれ独立にイボガから単離された。
1957年 Jurg Schneider(チバ社(現ノバルティス)の薬学者)はイボガインがモルヒネの鎮痛作用を強めることを見出した。
1966年 Büchiによって全合成が達成された。
1966年 アメリカ合衆国において、イボガインは1966年にLSDやメスカリンなどと共に規制物質法においてスケジュールIに分類された。それ以来、スウェーデンデンマーク、ベルギー、スイスなど他の国々もイボガインの販売や所持を禁止した。
1985年 Howard Lotsofがアメリカ合衆国で特許を取得し、物質使用障害の治療薬として利用することが提案された。
1988年 Dzoljicらが離脱症状の緩和に効果を持つをラットを用いた実験で示した。
1991年 Glickらがモルヒネの自己投与の回避に効果のあることを示した。
1993年 Cappendijkらがラットの実験でコカインの自己投与を低減させる作用を示した。
1995年 Rezvaniが動物実験の結果からアルコール依存症の治療の有効性を示した。
1995年 アメリカ合衆国国立薬物乱用研究所 (National Institute on Drug Abuse, NIDA) は1990年代初頭からイボガインの研究プロジェクトに資金援助を行っていた。しかし、他の報告により、非常に大量を投与すると脳に損傷を与える可能性が、また既往症をもつ患者は致死性の不整脈を起こす可能性があるとされたこと、さらにイボガインに関する研究において不適切な予算使用が行われたことから、NIDAは1995年に臨床研究へ発展させる試みを取りやめた。
1999年 Alperらが薬物依存症のヒトの被験者においてイボガインがオピオイド離脱症状を軽減する効果を示すデータを示した。
2000年 Mashらもヒトの被験者においてイボガインがオピオイド離脱症状を軽減する効果を示すデータを示した。
2005年 Patrick KroupaとHattie Wellsはヒトにおけるイボガインとオピオイドを併用することによる最初の治療方法を発表し、イボガインがオピオイド系薬物への耐性を減少させることを示した。クロウパらは Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies (MAPS) 誌上で彼らの調査結果を発表し、「管理」された少量のイボガイン塩酸塩によってオピオイド耐性が減少したと述べている。
2006年 8月17日、幻覚剤学際研究学会 (Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies, MAPS) により資金提供を受けた研究チームが、カナダ治験審査委員会 (Canadian Institutional Review Board) から長期的観測による事例研究を遂行することの「無条件認可」を得た。その研究では、バンクーバーのイボガ・セラピー・ハウス (Iboga Therapy House) において、イボガインを用いたオピエート依存症からの脱却・治療を求めるのべ20人の被験者について物質使用による変化などの調査を行う。
2006年 スウェーデンにおいて、薬物依存抑止の目的にイボガインを提供する問題のための非営利基金が設立が決定された。


 [作用機序]
腹側被蓋野 (VTA) でグリア細胞由来神経栄養因子 (GDNF) を活性化するという経路が提唱されている。
→イボガインのようにGDNFの発現を促進する基質は、パーキンソン病のような神経変性疾患筋萎縮性側索硬化症 (ALS) やアルツハイマー病などの治療に効果を発揮する可能性がある。
イボガインはα3β4ニコチン性アセチルコリン受容体に対する非競合的な受容体拮抗薬であり、中程度の親和力で結合する。
α3β4チャネルとNMDAチャネルは互いに似ており、それらのチャネルの結合部位には種々の同じリガンド(デキストロメトルファンなど)が結合する。イボガインの抗依存症作用はNMDA受容体拮抗薬として作用することによる可能性があることを指摘されていた。
オピオイドおよびグルタミン酸作動系に対する作用もイボガインの抗依存効果に寄与しているのではないかと考えられている。イボガインで治療を受けた人は、投与後およそ1時間以内にオピオイド離脱症状が休止したと報告している。
イボガインは弱い5-HT2A受容体リガンド、またσ2受容体拮抗薬でもある。
 [代謝]
人体ではチトクロームP450 2D6 によって速やかに代謝される。従ってイボガインそのものの効果が投与後に48時間以上続くことは期待できない。
人体での主要な代謝物はノルイボガイン(12-ヒドロキシイボガミン)であり、これはメトキシ基がフェノール性のヒドロキシ基に置き換わった構造を持つ。イボガインとノルイボガインの排出半減期は共に約30分である。
イボガインは脂肪中に蓄積され、放出される際にノルイボガインに代謝されると考えられている。
ノルイボガインの血漿中濃度はイボガインよりも高くなるため、より長時間にわたって検出され続けうる。代謝物であるノルイボガインはいくつかの受容体や輸送体に対する活性がより高い。
ノルイボガインは選択的セロトニン再取り込み阻害薬である。
κ-オピオイド受容体、μ-オピオイド受容体に対してそれぞれ中程度、あるいは弱い完全拮抗薬として働くので、メタドンのような化合物と同様にオピエート補充療法に用いることができる。
○フェンサイクリジン phencyclidine:PCP "Angel Dust"
 ←→NMDA受容体/ケタミン →参考1/2/3/4

1-(1-phenylcyclohexyl)piperidine
molecular weight 243.38.
PCPは強力なNMDA受容体遮断作用をもつ統合失調症様症状発現薬で、抗精神病薬抵抗性症状の発現機序や治療法開発の研究ツールとして近年重要視されている。

1926年 フェンサイクリジン(PCP)が合成された。
1952年 1952年にParke-Davisが特許をとり、Sernylという商品名をつけて、外科手術用の麻酔薬として研究を始めた。
1957年 PCPの人を対象とした検査が始まったが、副作用として幻覚・妄想などの精神症状が報告された。
1963年 外科手術麻酔薬としてSernylいう名称で認可された。
1965年 麻酔から覚醒する際に妄想や突発的な暴力などの副作用が起こることが判明したために1965年にはヒトへの使用を断念した。
1967年 動物用麻酔薬としてSernylanという名称で販売した。
1973年 米国でPCPの乱用者が増え、統合失調症様の症状を呈して受診する患者が通常の3倍に増加した。患者はPCP乱用後には、幻覚や妄想といった統合失調症の陽性症状のみならず、陰性症状を呈する者ものもいた。
1978年
(昭和53) PCPは全面使用禁止となった。


現在市中に出回っているPCPは全て非合法で合成されたものである。基礎的な有機化学の知識があれば、比較的簡単に費用をかけずに製造することができるので、麻薬業界の主要製品となっている。
benzomorphan誘導性の精神症状は、PCP結合部位への作用である可能性がある。

"Angel Dust" "Hog" "Rocket Fuel" "DOA" "Peace Pill"
最初の違法使用の報告は、Parke, Davidが開発を断念したわずか2年後の1967年である。San FranciscoのHaight-Ashbury地区での"the summer of love"。
1968 年には錠剤で売られ始め、地域によって様々な名称(New York:'hog'、Philadelphia: 't-tabs'、 Chicago : 'THC'、 Miami: 'PeaCe pills'→as 'THC tabs')で売られたが、"bad trips(恐ろしい幻覚体験) "を起こすという噂があったため、あまり広く使用されなかった。
1970年代に入り、様々な形状:液体、結晶粉末、錠剤が売られた。1973年から1975年に、主としてパッケージ(葉にふりかけて吸う)とマーケッティング戦略が変わったことにより、乱用薬物として市中に出回り社会問題化している。
1980年代には、米国で乱用が大きな社会問題となっている。PCPは、最もよく使用される幻覚剤となり、その使用者の大多数は15〜25歳。PCPマリファナなどに混ぜて売られているケースも多いので、米国におけるPCP使用者数を推定することは困難である。
PCPの使用法としては、水に溶かして、喫煙できるもの(パセリ、ハッカの葉、タバコ、マリファナ)の中にまきこんで、吸われている。錠剤やカプセルもある。
PCPを含むマリファナ煙草を "ダスター" や "キラージョイント" と呼ばれ、コカインとの混物は "ファイヤーボール" と呼ばれている。

 [PCPの作用]
PCPを溶かして静脈注射した場合は、数秒のうちに作用が現れ、5、6時間程度続く。
パセリやオレガノマリファナの葉にふりかけて喫煙した場合は、2〜5分以内に作用が現れ、15〜30分後にピークを迎える。
錠剤の形で、または食べ物や飲物に混ぜて口から飲んだ場合には、30分以内に作用が現れ、2〜5時間後にピークになる。

PCPは、脂肪組織に蓄積し、代謝によりPCHP, PPC and PCAAに分解される、吸飲した場合は心臓で1-phenyl-1-cyclohexene (PC) and piperidineに分解される。副作用が強く、半減期が長いので、人手の使用に適さない。

PCPは、環境から分離されたように感じる、心が身体から離れるように感じるので、解離性麻酔薬と分類されている。幻覚を感じるよりも、ボディーイメージの変化を引き起こす。
PCPの作用は様々で、強力な酩酊状態から思考の一時的な錯乱まで多岐に渡る。
第一段階で「離人現象」が生じ、第二段階では「知覚分離」が起こり時間や空間の認識が非常に困難になる。 最終段階では全ての感覚が麻痺。人格障害もあらわれる。
少量のPCPを服用した場合は、多幸感が得られ、隔絶感、幻覚を生じ、注意を集中したり会話をすることに困難を感じる。ときに強度の錯乱、妄想、恐怖、攻撃性、無力感を生じることもある。
中程度の量を服用した場合は、全身の麻痺感覚が得られ、感覚の鋭敏化、およびパニック状態や暴力的な防御行動をもたらすこともある。
PCPは他のドラッグに比べてバッド・トリップしやすいことで悪名高い。過剰摂取は痙攣、昏睡、死をまねく。また、摂取による意識混濁が死亡事故につながることもある。
乱用者は幻覚などに襲われ凶暴性を示し、過摂取は痙攣、昏睡、心臓発作、窒息、脳いっ血などを招く。
常用すると記憶力の低下や言語障害なども起こり、これらの作用のいくつかは数カ月から1年以上続くこともある。
フラッシュバック現象。言語障害抑鬱、不安、あるいはもっと深刻な精神障害を残すおそれがある。
常用すると耐性を生じる。常習者は精神的依存に陥る恐れがある。肉体的依存性はない。

大量に服用した場合は、パラノイア、幻聴、分裂病のような精神障害を起こすことがある。
大量に口から飲んだ場合には、不整脈てんかん発作、筋硬直、急性腎不全、死をもたらすことがある。
乱用者が統合失調症様の幻覚、妄想などの精神症状を示したことから、「フェンサイクリジン精神病」と呼ばれている。
統合失調症患者の脳内で、グルタミン酸神経の機能低下が生じているとする「グルタミン酸仮説」が提唱されている。根拠の一つには、PCP統合失調症の陽性症状(幻覚・妄想)と陰性症状(感情の平板化、意欲低下など)の両方を引き起こす点が挙げられる。
○塩酸ケタミン ketamine ←→NMDA受容体拮抗薬ケタミン
米国では長い間「スペシャルK、スーパーK、テクノ・スマック、ビタミンK(←→ビタミンK)」として街頭で売られていた。特にカリフォルニアの若者のあいだで急激に広がっていた。ケタミンを服用した青少年らが幻覚状態で授業を受けるなど社会問題化し、1999年から麻薬類に指定された。
英国内で乱用され始めているという報告がある。
日本でも、スペシャルKが密売され、ケタミンの乱用が日本でも急速に浸透しつつあるらしい。密売されているものはほとんどが正規の医薬品の盗品や横流し品であるらしい。
無色透明の液体または白色粉末として密売されている。白色粉末は、コカインやスピードとの区別がつきにくい。
乱用では注射のほかに粉末を鼻腔内に塗抹または吸引し、あるいは大麻やたばこに混ぜて吸煙されている。ケタミンはコカインの代用として鼻腔内に塗抹あるいは吸引されたという報告もある。
静脈注射されている。肝臓への影響を考えると、ケタミン乱用の浸透には警戒する必要がある。
2004年3月13日未明東京・六本木周辺で、米国人男性や日本人女性ら4人が相次いで薬物中毒で死亡した。死亡したブラジル人女性ダンサー(21)が死亡する数時間前、密売されている麻酔薬「ケタミン」を買いに行くと知人に伝えていたことが、関係者の話などでわかった。
ケタミンは、不正に密輸入され若者の間での乱用が問題となり、厚生労働省は2005年12月13日に麻薬及び向精神薬取締法に基づく「麻薬」に指定した。←→↑
ケタミンは低用量で鎮静作用や注意力、記銘力、記憶力などの障害作用を示す。
また自分の肉体、周囲、時間に対する知覚をゆがめる。
大量摂取すると幻覚や妄想症、世界から完全に離脱した感覚が生じることがある(常用者がKホールと呼ぶ状態)。
ケタミンは毛髪・尿検査に反応せず、服用したかどうか確認できない。
米陸軍は、負傷兵を落ち着かせる目的での「ケタミン」の投与を検討している。陸軍はケタミンモルヒネの代替物として使えるかどうかを検証するため、4分の1錠分のケタミンを鼻から吸入させる臨床試験を行なっており、今年に入ってからは、米食品医薬品局(FDA)の定める最終段階の臨床試験を進めている。 参考????????

http://plaza.umin.ac.jp/~beehappy/analgesia/subs-dependence.html#mental-dependence

 

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1
オピオイド
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精神依存・身体依存・耐性
 オピオイドに関する誤解が疼痛治療の障害となっており、精神依存(psychological dependence)、身体依存(physical dependence)、耐性(tolerance)の3つの概念を正しく理解することが重要である。
1. 定義
 精神依存、身体依存、耐性に関する定義は国際的にも統一されていない。本ガイドラインでは、American Pain Society、American Academy of Pain Medicine、American Society of Addiction Medicineが統一した見解をまとめるために設置したLiason Committee on Pain and Addictionの勧告を参考に、専門家の合意に基づき、以下の定義を用いる。
1)精神依存
 次のうちいずれか1つを含む行動によって特徴づけられる一次性の慢性神経生物学的疾患である。その発現と徴候に影響を及ぼす遺伝的、心理・社会的、環境的要素がある。
① 自己制御できずに薬物を使用する
② 症状(痛み)がないにもかかわらず強迫的に薬物を使用する
③ 有害な影響があるにもかかわらず持続して使用する
④ 薬物に対する強度の欲求がある
  (Savageらの定義)
[解説] 上記の定義は、Savageらにより作成された「嗜癖(addiction)」の定義である。日本では、「麻薬及び向精神薬取締法第2条二十四、二十五」において、「麻薬中毒:麻薬、大麻又はあへんの慢性中毒をいう。」、「麻薬中毒者:麻薬中毒の状態にある者をいう。」と述べられている。ここでの「中毒(麻薬中毒)」という用語は法律上の用語である。医学的に「中毒」とは依存性とは関係なく、大量投与時あるいは慢性的に投与した時に現れる有害事象であり、「麻薬および向精神薬取締法」で述べられている「麻薬中毒」は、「嗜癖(addiction)」に近い概念であると考えられる。また、「がん緩和ケアガイドブック」(日本医師会監修)では「中毒(麻薬中毒)」を以下のように定義しており、これは、Portenoyらの「addiction(嗜癖)」の定義を邦訳したものである。
Portenoyら:中毒/嗜癖(addiction)
以下のような特徴をもつ心理的、行動的な症候群と定義する。
1
薬物に対する極度の欲求と、それを持続的に使用できることに関する抗し難い心配。
2
強迫的な薬物使用の証拠がある。例えば以下が挙げられる。
a
目的なく薬物を増量する。
b
明らかな副作用にもかかわらず使用量を減らさない。
c
標的とした症状の治療以外の目的で薬物を使用する。
d
症状がないときに薬物を不適切に使用する。
かつ/または
3
以下の一連の関連する行動が一つ以上みられる。
a
薬物を手に入れるために、処方する医師や医療システムを巧みに操作する(例えば、処方せんを改ざんする)。
b
他の医療機関もしくは非医療機関から薬物を手に入れる。
c
薬物を蓄えている。
d
他の薬物の不適切な治療(例えば、アルコールや鎮静薬/催眠薬を乱用する)。
 一方、WHO の統計基準に基づき分類された疾病や死因の分類である ICD-10では「嗜癖(addiction)」は「依存症候群(dependence syndrome)」という用語として、また、精神医学の領域において ICD-10とならび代表的な診断基準の一つである DSM-IVでは「物質依存(substance dependence)」という用語で定義されている。
WHO:依存症候群(dependence syndrome)
ある物質あるいはある種の物質使用が、その人にとって以前にはより大きな価値をもっていた他の行動より、はるかに優先するようになる一群の生理的、行動的、認知的現象のことである。依存症候群の中心となる特徴は、精神作用物質(医学的に処方されたものであってもなくても)、アルコールあるいはタバコを使用したいという欲望(しばしば強く、時に抵抗できない)である。ある期間物質を離脱したあとに再使用すると、非依存者よりも早くこの症候群の他の特徴が再出現することが明らかにされている。
DSM-IV:物質依存(substance dependence)
臨床的に重大な障害や苦痛を引き起こす物質の不適切な使用に伴って、以下の3つ(またはそれ以上)が、同じ12カ月の期間内のどこかで起こることによって示される。
(1)
耐性、以下のいずれかによって定義されるもの。
(a)
酩酊または希望の効果を得るために、著しく増大した量の物質を必要とする。
(b)
物質の同じ量の持続使用により、著しく効果が減弱する。
(2)
離脱、以下のいずれかによって定義されるもの。
(a)
その物質に特徴的な離脱症候群がある。
(b)
離脱症状を軽減したり回避したりするために、同じ物質(または、密接に関連した物質)を摂取する。
(3)
その物質を当初の見込みより大量に、またはより長期間使用する。
(4)
物質使用を中止、または制限しようとする持続的な欲求または努力の不成功があること。
(5)
その物質を得るために必要な活動(例:多くの医者を訪れる、長距離を運転する)、物質使用
(例:たてつづけに喫煙)、または、その作用からの回復に費やされる時間の大きいこと。
(6)
物質の使用のために重要な社会的、職業的または娯楽的活動を放棄、または減少させていること。
(7)
精神的または身体的問題が、その物質によって持続的、または反復的に起こり、悪化しているらしいことを知っているにもかかわらず、物質使用を続ける(例:コカインによって起こった抑うつを認めていながら現在もコカインを使用、または、アルコール摂取による潰瘍の悪化を認めていながら飲酒を続ける)。
 「中毒(麻薬中毒)」の定義は、学会や団体によって用語、定義がまちまちで統一されていない。本ガイドラインでは、これらのなかで最も簡潔なSavageらの「嗜癖(addiction)」の定義を、「精神依存」という一般的にわかりやすく、かつ医学的な「中毒」と区別できる表現を用いて定義した。また、「中毒(麻薬中毒)」という法律用語は医学的な急性中毒を意味する「中毒」と異なり、理解の混乱を生じさせる原因となるため使用しないこととした。
2)身体依存
[定義] 突然の薬物中止、急速な投与量減少、血中濃度低下、および拮抗薬投与によりその薬物に特有な離脱症候群が生じることにより明らかにされる、身体の薬物に対する生理的順応状態である。
[解説] 身体依存は、オピオイドに限らず長期間薬物に曝露されることによって生じる生体の生理学的な適応状態である。身体依存が生じているかどうかは、薬物を中止した場合に、薬物に特徴的な離脱症候群が生じることで判断する。すなわち、薬物を中止した時に離脱症候がみられれば身体依存が形成されていることを示す。オピオイドの場合、下痢、鼻漏、発汗、身震いをふくむ自律神経症状と、中枢神経症状が離脱症候群として起こる。
身体依存を形成する薬物はオピオイドのみではなく、バルビツール酸、アルコールがある。さらに、ニコチンも弱い身体依存を示す。
身体依存はオピオイドの長期投与を受けるがん患者の多くで認められるが、痛みのためにオピオイドが投与されていれば生体に不利益を生じないこと、精神依存とは異なること、オピオイド以外の薬物でも生じる生理的な順応状態であることを理解する必要がある。
3)耐性
[定義] 初期に投与されていた薬物の用量で得られていた薬理学的効果が時間経過とともに減退し、同じ効果を得るためにより多くの用量が必要になる、身体の薬物に対する生理的順応状態である。
[解説] 耐性は、オピオイドに限らず長期間薬物に曝露されることによって生じる生体の生理学的な適応状態である。耐性が生じているかどうかは、同じ効果が得られることが見込まれるにもかかわらず、薬物を増量しても同じ効果が認められなくなることで判断する。耐性形成は薬物の薬理作用ごとに異なる。モルヒネの場合、嘔気・嘔吐、眠気などには耐性を形成するが、便秘や縮瞳には耐性を形成しない。
 オピオイドの場合、痛みの原因となっている腫瘍の増大がないにもかかわらず鎮痛効果が弱くなること、あるいは、腫瘍の増大に伴った痛みに対してオピオイドを増量してもそれに見合った鎮痛効果が得られないことで判断される。
【参考文献】
1)
Savage SR, Joranson DE, Covington EC, et al. Definitions related to the medical use of opioids: evolution towards universal agreement. J Pain Symptom Manage 2003; 26: 655-67
2)
木澤義之, 森田達也 編. 用語と解説. 日本医師会 監. 2008年度版がん緩和ケアガイドブック, 東京, 青海社, 2008, p4
3)
Portenoy RK. Chronic opioid therapy in non-malignant pain. J Pain Symptom Manage 1990; 5: S46- 62
4)
WHO. Technical Reprot Series, No.915: 2003
5)
中根允文, 岡崎裕士, 藤原妙子 訳. ICD-10: 精神及び行動の障害, 東京, 医学書院, 2003
6)
高橋三郎, 大野 裕, 染矢俊幸 訳. DSM-IV-TR: 精神疾患の分類と診断の手引き, 東京, 医学書院, 2003