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体力の衰えより早く来る…「感情の老化」はこう防ごう

いつもイライラ。一度落ち込むと長い。やる気が起きづらい…。それはもしかしたら「感情の老化」が始まっているのかもしれません。実感しやすい体力や知力よりも、感情の衰えは早く始まります。長く働き続けるためにも「感情老化」のケアが必要です。
脳の加齢萎縮は、前頭葉から始まる
(C)Pixta
ストレスの多い職場、仕事量も増す一方。なんとか平穏無事に日々を送っていけたらと思う半面、この先長く働くためにはどうすればいいのか、漠然とした不安を抱く人も多いかもしれません。
「実は、平穏に、リスクを避けてといった考えで凝り固まってしまうことこそ、全身の老化の引き金になる“感情老化”の徴候」と指摘するのは、和田秀樹こころと体のクリニック(東京・文京区)院長の精神科医和田秀樹さん。
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感情老化とは、脳の中の「前頭葉」という感情や意欲、創造性などをつかさどる部分が老化することをいいます。和田さんは長年、高齢者医療の現場で膨大な量の脳のCTやMRI検査画像を観察してきた結果、「加齢によって脳は萎縮するが、均等に萎縮するわけではなく、前頭葉が最も早く萎縮することが分かってきた」と言います。前頭葉の萎縮は、早い場合は40代から始まるのだそうです。
前頭葉が萎縮すると、怒りが収まらない、意欲が湧かない、柔軟性がなくなるといった「感情老化」の症状が多くなります。下のチェックリストで算出した感情年齢が実年齢を上回った人は、「感情老化が始まっていると自覚して」(和田さん)
感情老化が始まる40代を、和田さんは「思秋期」と呼びます。子どもから大人への移行期間である思春期に対して、大人から老人への準備期間に当たるのが思秋期。「女性の場合、思秋期には感情老化、ホルモンの低下による更年期、神経伝達物質セロトニンの減少によるうつ、とさまざまな変化が同時多発的に起きます」(和田さん)
前向きに働き続けるためには前頭葉に刺激を
このような大きな変化に身を任せず、老化を自覚した時点で抗う決意を持つことが、老化に歯止めをかける鍵になります。
「感情老化は人から意欲を奪い、気持ちを切り替えにくい状態にします。しかも、そのままの状態で放っておくと老化は進行する。身なりに構わなくなって外見も老け込んでしまったり、何かにつけおっくうになって体を動かさなくなったり。全身の老化の引き金になるんです。気づいた時点で感情老化に抗う行動をとることで、50~60代になったとき、生き生きと働き続けるか、老け込んで元気がなくなってしまうかという大きな差がついてしまう」と和田さん。

感情老化の進行をできるだけ遅らせることが、若々しさや元気をキープするのに不可欠。そこで和田さんが提案する処方箋は「ドキドキすること、想定外の場面に遭遇すること」。つまり、新しいことにチャレンジして脳の前頭前野に刺激を送ることが、感情老化を抑えるのに有効なのだそうです。簡単に実践できる5つの項目を参考に行動を始めて、心の若さを手に入れましょう。




処方箋#1
「自分が楽しい」を優先して考えてみる
周囲の人のことばかり気遣い、自分が心からやりたいことを後回しにしていませんか。時間ができたときは、まず一番に「自分が楽しめること」は何かを考えてみましょう。
処方箋#2
最初から答えを求めすぎない
「女性は男性よりも保守的な傾向が強い」(和田さん)。「失敗しない範囲」のことだけをしていては、感情老化は進むばかり。時には答えを求めず行動してみることも大切。
処方箋#3
初めての食材や旅行先にトライする
行ったことのない店に食事に行く、普段は使わない食材を使って料理してみる、ほかの人が行かないような場所に旅行するなど、普段の行動を少しだけ変えてみましょう。
処方箋#4
投資などに挑戦、リスクを負ってみる
貯金の一部を投資に使う、断っていた飲み会に参加してみる。自分では予測のつかないことに挑戦し、ハラハラしたりドキドキしたりすることも感情老化予防につながります。
処方箋#5
恋愛こそ感情の若さを保つ特効薬
恋愛をすると確実に女性ホルモンは増え、感情が刺激されて前頭前野も活性化。リアルな恋愛だけでなく、アイドルに夢中になるなどの“疑似恋愛”に身を焦がすのもいいかも。
この人に聞きました

和田秀樹さん
精神科医東京大学医学部卒業。国際医療福祉大学大学院教授、一橋大学経済学部非常勤講師、和田秀樹こころと体のクリニック院長。近著に『「思秋期」の生き方 45歳を過ぎたら「がまん」しないほうがいい』(大和書房)など
(ライター 柳本操)
[日経WOMAN2015年1月号増刊『日経WOMANsoeur』の記事を再構成]
 https://style.nikkei.com/article/DGXMZO90410870R10C15A8000000/引用